ワンちゃんの精巣(睾丸)は生まれた直後はお腹の中にあります。それが、生後6か月くらいまでに、鼠径菅(後ろ足の付け根)を通って、陰嚢と呼ばれる袋の中に移動します。6か月齢までに、精巣がお腹の中や足の付け根にあり、陰嚢の中に精巣が移動しない状態のことを潜在精巣といいます。
潜在精巣は、左右両方なることも、片側だけのこともあります。潜在精巣の一番の問題は、そのままにすると、将来、精巣腫瘍になってしまう危険性がかなり高くなります。
今回は、潜在精巣から精巣腫瘍になってしまったワンちゃんのお話です。
ヨークシャーテリアの男の子が数日前より、元気食欲がないということで来院されました。
陰嚢内には精巣が一つしか確認できませんでした。血液検査では、貧血を認め、レントゲンにて、お腹の中の精巣が、腫瘍化し巨大になっているのが確認されました。
開腹手術にて、腫瘍化した精巣を摘出しました。幸いこの子は、腫瘍が精巣内にとどまっており、転移や再発もなく改善することができました。貧血が悪化していたり、腫瘍が進行していたりすると命にかかわることもあります。
潜在精巣は早期に摘出することで、腫瘍化することを予防できます。陰嚢内に精巣が二つ確認できない場合、注意が必要です。早めにご相談ください。